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お菓子材料の知識

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和菓子の主要澱粉、コーンスターチ 馬鈴薯澱粉 甘藷澱粉 葛澱粉 かたくリ澱粉 蕨粉(わらびこ)
(小麦粉・餅粉・米粉はそれぞれのページを参照のこと)

コーンスターチ (コーン=とうもろこし、スターチ=澱粉)

製造法
まず原料のとうもろこしを送風精選機、石分離機等でゴミを取り除き、これを0.25〜0.30%の亜硫酸水に浸漬する。
50〜60時間経過すると、硬いとうもろこしが膨潤して軟らかくなる。
この軟かくなったとうもろこしをグラインダーで磨砕し、大きな水槽中に流し込み、攪拌し、液面に浮かんだ胚芽を取り除き、澱粉液を篩に掛けて澱粉を沈澱させ、これを脱水機にかけて乾燥させる。
用途は、コーンスターチは糊化したときには安定感があり、冷えても粘性が安定している性質からカスタードクリームなどの粘性を必要とする商品などに利用する。
また焼き菓子やスポンジなどの小麦粉と併用することにより製品粘性を調節するのに用いる。
コーンスターチと良く似たものに片栗粉(馬鈴薯澱粉)が有るが、これはコーンスターチよりも粘性も低くて、小麦粉と併用しても粘性調製の効果はほとんど得られない。
コーンスターチは「打ち物」類にも利用できそうだが型くずれし易く、また口に入れたときに粉っぽさが残りあまり使用されない。
成分: 精製されたものは、水分13.31%、蛋白質1.2%、脂肪0.01%、灰分0.37%、澱粉85.11%

馬鈴薯澱粉

製造法
製造法は、馬鈴薯(じゃがいも)を機械ですりつぶして、澱粉を遊離させ水中で比重の差により澱粉をほかの部分と分離沈澱させて採取する方法や、遠心分離機を用いる方法が採用されている。
用途は、口当たりがカリッとしたものに仕上がり型くずれも少ないので、和物の「ぼうろ」類などによく利用される。(コーンスターチも同様に「ぼうろ」類に使用できる。)
片栗粉は、「打ち物類」にも型がくっきりと仕上がることからよく使用されるが、使用する量には注意すべきだ。
また片栗粉はクリーム類にも利用出来そうだが、冷えてしまうと粘性が失われてしまうので避けた方がよい。また料理などで、とろみを出すのに用いられるが、これも熱のある間だけで冷めると粘性も無くなってしまう。

成分: 水分17.76%、蛋白質0.88%、脂肪0.05%、繊維0.06%、灰分0.58%、澱粉80.68%
片栗粉(馬鈴薯澱粉)とコーンスターチはよく似た特性があるので、その用途に混同してしまい勝ちだが、先述のような違った性質もあるので、目的商品に応じて使い分けをすべきである。また手粉にはどちらが向いているかは私見ではあるが、片栗粉(馬鈴薯澱粉)を使用したほうが風味の点で良いと思う。コーンスターチは粉っぽさが残るのであまりお勧めしない。

甘藷(サツマイモ)澱粉

製造法は、だいたい馬鈴薯と同じである。
成分は水分16.66%、脂肪0.1%、澱粉82.93%、繊維0.01%、灰分0.3% 
性質:
サツマイモに含まれる澱粉は70℃前後(50℃で糊化する改良芋粉もある)で糊化し始める。糊化状態は非常に粘りが強くわらび粉に匹敵する、このために今ではわらび粉の代替え品として用いられている。
加熱されたサツマイモが甘いのは、加熱され糊化した澱粉にβ-アミラーゼという酵素が作用し麦芽糖が生成されるためだが、ゆっくりと加熱されるほど甘味が増す。同じ芋でも電子レンジで調理すると甘味が足りず、ゆっくりと加熱される石焼きイモが甘いのはこのためである。
最近話題の紫イモ「アヤムラサキ」は、元来色素(紫色素、アントシアニン=ポリフェノール類の一つ)をとるための芋だが、最近このアントシアニンが身体によいことが解り、お菓子に利用されている。紫芋に含まれる紫色素アントシアニンは、pHにより発色を変える性質があり、製品が思った色彩に仕上がらないのはこの性である。
変色性質として、酸性領域で赤〜赤紫色で安定であり、中性で深褐色、アルカリ性で汚緑色に変色する、また金属イオン・蛋白質・膨張剤によっても変色するので注意が必要である。
最近では、粘り気がわらび粉(蕨粉)に似ていることから、わらび粉の代替え品としてタピオカと並んで利用されている。

(くず)澱粉

葛澱粉は葛の根から採取するが、ほかの澱粉と比べると、透明に近い糊状となるのが特徴である。
葛澱粉の製造法は、まず秋から寒中期に葛の根を掘り取り、水洗いし泥土を洗い流したあと細かく打ち砕き澱粉乳を流し出し、これをシフトして粕を除き、沈澱水槽で澱粉を沈澱させる。
いったん沈殿すれば、上水を流してアクを取り、さらに沈澱をくり返えす。途中白度を高めるために灰を用いてアク抜きをする。
さらに沈澱を十数回くり返してほとんど純白になった時、晒し箱で数目日千しするといった手間暇な工程を経て出来ている。
葛澱粉の成分は、水分28.38%、脂肪0.08%、澱粉80.86%、繊維0.88%、灰分1.80%

判別方法:
本物の葛の見分け方としては、葛特有の風味を有するので直ぐに分かる。また葛の固まりを指に挟んで壊してみると簡単に壊れるものほど混ぜものの多い葛粉といえる。
また製品の出来上がり直後は色沢良好で透明度も高いが、時間(24時間くらい)が経過するにしたがって白濁が進み、長時間の冷却でも白濁して食感も落ちるので冷蔵保存にも適しない。
いつまでも透明で冷蔵保存も可能なものは本葛ではありえず、他の澱粉や海藻加工物類が混合しているものとみてさしつかえない。
(当店では、吉野地方で産する純国産の「随一」という本葛を用いている)

かたくリ澱粉

かたくりは百合科の野生植物で、この根を四、五月ころ掘り取り、水洗いしたあと外皮を除いて砕き、葛澱粉と同様に処理して製品にする。しかし現代では業務用としては製造・販売されていない。
代替え品として一般には馬鈴薯澱粉を代用され、今では馬鈴薯澱粉の事を「片栗粉」と勘違いしている者もいる。
成分: 水分16.5%、蛋白質0.9%、澱粉82%、灰分0.6%

わらび澱粉 (蕨粉 わらびこ)

蕨は地下に直径1p位の太く長い根茎を有し、横に伸びて繁茂している。
わらび澱粉の製造は、秋の九月から十一月ごろにかけて、わらびの根を掘り出し、まず30センチくらいの長さに切断し、臼(木製もたは石製)の中でよく粉砕し、これに水を加えてでんぷんを洗い出し、何回も水洗いと沈殿を繰り返して精製し、製品にする。
精製法は、葛澱粉と同様に処理して行なう。
収量は、生原料に対して21%前後である。生産は比較的僅少であるが、わらび餅、その他に用いられる。
国産わらび澱粉は非常に高価なものなので、最近は国産わらび澱粉の代わりに、片栗粉、ジャガイモ、甘藷でんぷん、タピオカ澱粉などで調合・混合された物が殆どである。

国産わらび粉

純正国産わらび粉は灰汁も強いが、その分風味も優れている。精製段階でもこの風味を大切に残すためにも純白には仕上げていない。
国産のわらび粉かどうかは、熱を加えて練り上げると、茶褐色の独特の腰のある粘りが出てくる。冷えると強い粘りがありながら歯切れと口溶けの良さ、独特の野性的な風味はその他の澱粉質とは明確に異なる。
(仕上がり比較)
左図の様に国産わらびの仕上色は黒っぽくて見た目も悪い。
代替えわらび粉(タピオカ澱粉や甘藷澱粉などでのミックス製品)は色も浅く、食味も進む色合いだが、食すると味はまるで無い。  純国産わらび粉 (価格)
  中国産わらび粉    国産わらび粉


タピオカ

キャッサバの根からとったデンプンである。
キャッサバは約4,000年前から食用として利用されていたもので、食用としての歴史は古く、毒性のあることもよく知られている。現在この植物は日本では栽培されてないが、それを加工したタピオカ粉はデザートの原料としても使われ日本でも知られた食材として多く輸入されている。
キャッサバは肥沃の乏しい土地でもよく生育する代表的な熱帯作物であり、熱帯アメリカが原産と言われているが、現在ではアフリカ、南米、東南アジアでも広く栽培されだしている。
キャッサバの背丈は3メートルほどに成長し、根に大根を茶色にしたような巨大な塊根(イモ)ができる。
この塊根(イモ)を粉砕しでんぷんを洗い出し、天日で乾燥させてタピオカ粉ができる。

原料のキャッサバだがこれには毒性を含んでいる種もある。
もともとキャッサバにはスイート種(甘味種)とビター種(苦味種)があり、スイート種は皮や芯を取り除いき、そのまま揚げ菓子にしたり主食用として利用されている。
毒性を有するビター種は工業用アルコールやバイオエタノールの原料にされ、その名の通りに苦味があり、外皮の中にはファセオルナチンという化学物質が含まれています。これが青酸化合物(青酸性毒物)となり、生身の人間が食べれば当然重篤な症状を引き起こし最悪の場合は死に至る。

生産量は、スイート種よりも毒性のあるビター種の方がより栽培されている。
これはビター種の方がより多くの澱粉を含んでいるので、生産効率の点からもタピオカ製造には主にビター種が多く生産されて所以である。
キャッサバの毒性は、水溶性のため何度も水にさらして洗い流され、この過程で青酸化合物も流出してしまうので食用タピオカ澱粉には毒性が残存することはないとされている。

製菓用としては、タピオカ澱粉は粘りと透明度が高く、ワラビ粉や葛粉の代用とされる。最近ではパンや麺類にモチモチ感を出すためにも使用されるようになってきている。
食品以外では、プラスチックと同等の強度があることから、最近では紙袋やポリエチレン袋の工業用としても利用されている。



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