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お菓子材料の知識

 和菓子技術者になるための必須知識

最近残念に思うことですが、若い技術者が和菓子の基本ともいえる材料の基礎知識を習得しようとせず、技巧を追い求めているのを見ますと和菓子の将来を憂いてしまいます。ここでは真に和菓子の味を探求しようとする若き職人の一助となればとの思いで執筆しました。

和菓子の主原料、「あずき」の品種と餡について。

大納言・中納言・小豆

菓子職業人ならば必須の知識として、小豆や大納言小豆、白小豆、輸入小豆などの多種多様な豆類の特徴を理解しておくことは大切なことです。
俗な解説書には、あずき粒の大小で大納言と小豆とに分類している無能な解説者がいるのには呆れますが、大粒だから大納言、小粒だから小豆ではなく品種の違いによる区分と云うことを職業人ならば理解しておいて下さい。
小豆も大納言も同じくマメ科ササゲ属に属しているのですが、大納言の品種には、あかね大納言、ホクト大納言、カムイ大納言、トヨミ、丹波等多くの種類があり、各地の農業試験場でも毎年品種改良が繰り返されているのです。
小豆には丹波、エリモ、備中、キタノオトメ、サホロ、コトブキ、ハヤテ、シュマリ等の数多くの種類があり、これもそれぞれの地域特性に応じた新しい品種が開発されています。
小豆の中でも、特殊なものは白小豆が有り、備中、丹波の2種類があります。現在出回っているホクレン白小豆は丹波を母種とし、丹波産を凌駕している。
昔は「中納言」といった品種もありましたが、大納言と小豆の中間の性質を有し、どちらつかずで現在は市販品としては見ることはない。

大納言と小豆の違いとそれぞれの用途

大納言種の特徴は、まずその皮の風味にあり、外皮自体の味が濃厚で小豆独特の味があり、小豆に比べて煮崩れしにくく、炊き上げると香りの良い餡が出来ます。大納言は豆皮が柔らかく仕上がり、皮と餡とのバランスが食感を損ねることがなく、粒餡や鹿の子豆に適した種である。
小豆種は、こし餡に適した豆であり、その粒子は大納言種よりも比較的細かいが、外皮は大納言種よりも堅く煮くずれしやすく味も薄い。また中味の粒子「ご」の滑らかさは大納言種よりも優れているので口当たりの点で漉し餡に適している所以です。
近年には小豆の粒子選別技術が進み、篩い分けられた大粒の小豆が安価ゆえに、大納言の代わりとして用いられているが所詮は小豆品種なので到底大納言種の風味には及ばない。
菓子技術者としては、「粒餡用」としての大納言、「こし餡用」としての小豆の特性を認識し、コストよりも商品に応じた品種を選び使用するようにしたほうが、顧客の信頼も得られ長期的には賢明だと思います。

煮炊きの水質について

美味しい餡に煮上げるには当然水質にも注意をしなければなりませんが、残念ながら環境悪化のせいで餡に適した水質は年々悪化しているように思われます。
特に上水道の水質悪化はかなりなもので、消毒処理剤の多量投入で水の硬度が上がり、美味しい餡作りには適さなくなってきています。このような硬水を生で使用することは避けて、活性炭と中空繊維を用いた浄化水で、豆を仕上げるのがベストではないでしょうか・・・

豆の水漬けの功罪

製餡技術書や解説書などの多くは、煮豆の際に豆を一夜水付けして吸水を促すものが多いが、これも豆の品質によりけりで場合によっては逆効果の場合もあります。
私の経験から云えば、質の悪い豆にはこの方法(水漬け処理)も当てはまりますが、良品の豆にはむしろ逆効果でせっかくの豆の風味を台無しにする恐れもあります。特に新物の銘柄品を使用する場合には、水漬けせずに煮上げる方が風味は活かされます。
また小豆の水漬け処理時間も10時間までとするべきで、10時間以上の水漬けは豆の風味を台無しにするばかりか不味い餡になってしまうので心得ておくべきである。

豆煮・渋切り・本炊き・むらし煮

豆の性質はその年の気候、産地、畑の土質、収穫、乾燥具合そして新物、ヒネによってかなりのばらつきがあり、炊き方・煮上げる時間も当然違ってくるもので、その豆の性質を熟知した者だけが美味しいものに仕上げられるものなのです。
煮豆行程での渋きりのタイミング、晒し具合も豆を熟知していないと美味しい製品に仕上がらないし、蒸らし加減の大切さも熟知しておかねばなりません。
豆の良否・性質は毎年毎に変わるので、その癖を知るには自己が仕上げた製品から教わるしか方法はありません。
初心者は仕上がった製品から、豆のクセを知る努力を惜しんではなりません。仕上げた製品から学ぶ者は技術も向上するのですが、仕上げっぱなしで振り返らぬ者は人間的にも失格者であり、菓子職人になる器量はまったくないものと心得るべきでしょう。

餡練りについて

餡煉りにしても生餡の質(豆の品質・煮豆・製餡行程)によつて千差万別であり、この性質を熟知した者だけが良質の餡に仕上げることができるものです。最近は生餡(製餡)業者から仕入れたもので製餡することも多いと思いますが、基本の小豆の事を知らずして美味しい餡を作れる筈はありません。
プロたるべき者は、仕上げるべき餡を頭におき、その目的とする餡に理想的な小豆選びと生餡作り、煮炊き方法を重視すべきだと思います。

生餡(市販品)について

みずみずしくしっとりとした餡に仕上がらないと嘆いている技術者も見受けますが、聞いてみると殆どが市販の業者から生餡を仕入れています。
製餡業者の餡を悪く云うつもりは有りませんが、最近は品質が非常に落ちてきています。
品質にうるさい京都には、それなりの製餡業者も有り、当店も一部のOEM商品に限っては製餡業者の生餡を使用することもあります。当然のこと製餡業者の中でも当店のポリシーに合致した一級の製餡業者を選んで購入しております。
製餡業者から仕入れる場合の注意点は、まずその業者が扱う一級品を選ぶことです。製品のなかには情けない位に品質の粗悪なものも見受けられますので、安いからと云って購入しないことです。
しかし製餡業者の超一級品といえども自家製餡の品質には到底及ぶものではないことを心得ておくべきです。

業者の安価な餡は国産あるいは外国産の売り物にならない等外品を使用し、ひどいときには3年以上経過したヒネ豆を使用しているところも有るくらいで、当然ながらしっとりとした餡など出来るわけもありません。
また安価な生餡は、豆の皮がかなり混入しています。これは歩留まりを高くするために、グラインダーを使用して小豆の皮まで磨りつぶして混入しているのが実情です。
また時間コストや燃料を節約するために、充分な蒸らしもせずに一時間以内に強引に製品化しているのが現状です。
このような生餡を使用した製品は、どのようにしても美味しいお菓子など出来るわけもありません。
美味しい製品に仕上げるには自家製餡を使用するしか方法はありませんし、豆も当年度産の新鮮な国産豆を使用するようにし、丁寧に煮て、製餡して下さい。
当店では全て新物の自家製の餡を使用しています。(一部のOEM商品には製餡業者に委託したものを使用)
また、仕入後の保有している全ての豆を冷凍庫や低温冷蔵庫で保管していますので、年間を通じて味の劣化はほとんどありません。
このくらいしなければ美味しい製品にはなりません。あんこを食してみればその菓子屋の総合的な腕が解るといわれる所以です。是非自家製餡で美味しいお菓子を作る様に心掛けて下さい。

ここでちょっとコマーシャルです、笑、、、
下記のサイトから当店の各種餡(大納言粒あん・漉し餡・和三盆白あん・煉りきり餡)をお買い求めいただけます。




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