小麦粉・小麦澱粉・グルテン

お菓子材料の知識
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 海外小麦粉事情

外国で使われている小麦粉は、 その土地によって品質がかなり違います。
原料の小麦の品質と製粉の仕方が国や地域 によって違うからです。
日本で入手できる小麦粉との違いを分かった上で、他の材料 との配合比を変えたり、作り方を工夫することも必要になるでしょう。

 イギリスの小麦粉

 小麦粉の主な用途はパンと菓子です。生産される小麦粉の約64%が業務用のパン用粉で、約16%が業務用の菓子用粉、約3%が家庭用粉です。パン用粉の約84%が白パン用の粉で、品位を示す灰分は14%水分ベースに換算して0.53〜0.56%ですから、日本で2等粉と呼ばれているものよりややグレードが低いと言えます。
  イギリスでは国内の食用需要量の3倍に近い量の小麦が生産されていますが、パン用に適するとされる品種は生産量の1割程度しかないのが現状です。以前はカナダから 高品質のパン用小麦を輸入していましたが、国内産小麦の生産量が増え、それに比べて割高になるためほとんど輸入されなくなりました。イギリスの小麦はパン用品種でもたんぱく質の量が少ない上に、パン用以外の品種を混ぜて不足を補う場合もあるため、質が良い食パンを作りにくいようです。チョリーウッド製パン法を利用したり、グルテンを添加したりして良い食パンを焼く努力を続けていますが、パンの品質は以前より低下しています。灰分が高い小麦粉を使った褐色パン、全粒粉を使った全粒粉パンもパンの中のそれぞれ約6%、及び10%を占めますが、消費は減り気味のようで す。
イギリスはビスケットの本家です。小麦粉全体の約14%がビスケット用で、約1.6% のケーキ用に大きな差をつけています。ビスケット用小麦粉にはビスケット用品種の小麦が適していますが、生産量が少ないため、パン用小麦品種の中でたんぱく質の量 が少ない小麦も使われています。
家庭用小麦粉は、基本的には一種類です。一般的には、日本で強力粉と呼ばれている粉よりも弱めのグルテンの力を持ったものが売られています。家庭では、この粉でスコーン、ビスケット、パンなどを焼いています。
主な用途のほかに、かなりの量の小麦粉がグルテンとでん粉の分離に使われています。グルテンは活性を保ったまま乾燥して粉末にし、パン用小麦粉の力の弱さを補う目的で、小麦粉に混ぜて使われます。

 フランスの小麦粉

小麦粉の主な用途はパンと菓子で、パスタも僅かですが作られています。従って、業務用はパン用、菓子用、パスタ用に別れています。フランスは小麦の生産国で、ほぼ全国的に小麦が作られていますので、製粉工場はその土地で入手しやすい小麦を原料として使います。その結果、同じフランスでも、地区によって小麦粉の品質に差があります。
 さらに、フランスでは、小麦粉を灰分量によっていくつかのタイプに分けています。タイプを45、55、65、80、110、150という数字で表わします。これらの数字は乾物量ベースの灰分量(水分を0として計算した場合の灰分量)の目安で、45というのは乾物量ベースの灰分が0.50%以下、55は0.50〜0.60%、65は0.60〜0.75%を意味しています。生産されている小麦粉の90%以上はタイプ55の粉で、これがパン用に使われます。タイプ45の粉はケーキ用に、タイプ65の粉はビスケットの製造に使われることが多いようです。タイプ80、110、150の粉は灰分が多い粉か全粒粉に近いものです。
パン用小麦粉のたんぱく質の量は日本に比べて少なく、14%水分ベースにして10〜11%のものが多いようです。そのため、フランスには食パンのようなグルテンの力を必要とするパンはほとんどなく、あまり膨らまなくてもよい、いわゆる「フランスパン」が作られています。
家庭用小麦粉は、基本的には一種類です。一般的には、日本で準強力粉と呼ばれている粉よりもやや弱めのグルテンの力を持ったものが売られています。

 ドイツの小麦粉

 小麦粉の主な用途はパンと菓子で、パスタも僅かですが作られています。従って、業務用はパン用、菓子用、パスタ用に別れています。パン用にも、高級パン用粉と標準パン用粉があります。ドイツは小麦の生産国で、ほぼ全国的に小麦が作られていますので、製粉工場はその土地で入手しやすい小麦を原料として使います。その結果、同じドイツでも、地区によって小麦粉の品質に差があります。
 さらに、ドイツでは、小麦粉を灰分量によっていくつかのタイプに分けています。405,550,812,830,1050,1600,1700という数字で表すタイプと、全粒粉があります。これらの数字は乾物量ベースの灰分量(水分を0として計算した場合の灰分量)の目安で、550というのは乾物量ベースの灰分が0.55%という意味です。量的にはタイプ550の粉が最も多いようですが、その他のタイプの粉も使われています。パン用小麦粉のたんぱく質の量は日本に比べて少なく、14%水分ベースにして10.5〜11.5%のものが多いようです。そのため、ドイツには食パンのようなグルテンの力を必要とするパンはほとんどなく、あまり膨らまなくてもよい、硬めのパンが多いのです。
 家庭用小麦粉は、基本的には一種類です。一般的には、日本で準強力粉と呼ばれている粉よりもやや弱めのグルテンの力を持ったものが売られています。

 アメリカの小麦粉

 小麦粉の主な用途はパンと菓子で、パスタも僅かですが作られています。従って、業務用はパン用、菓子用、パスタ用に別れており、それぞれの用途の中でも、原料の 小麦の配合を変えたりして、品質に特徴を持たせたものもあります。アメリカは小麦の生産国で、ほぼ全国的に小麦が作られていますので、製粉工場はその土地で入手しやすい小麦を原料として使います。その結果、同じアメリカでも、地区によって小麦粉の品質にかなりの差があります。
  日本の小麦のように1等粉、2等粉と分けて採らないで、ふすまを除いただけの「ストレート粉」か、それからふすまに近い粉の部分を少し取り除いた「ロング・パテント粉」と呼ばれるものが主流です。灰分含有量としては0.50%以上で、日本の2等粉に近いグレードのものです。ただし、ケーキ用粉としては、ふすまに近い粉の部分をもっと多く除いた「ショート・パテント粉」と呼ばれるものが使われています。
  スーパーマーケットなどで売られている家庭用小麦粉は、基本的には一種類です。家庭では小麦粉をパンの材料として使うことが最も多いのですが、同じ粉でクッキーも作ります。地域によってかなり差がありますが、一般的には、日本で準強力粉を呼ばれている粉くらいのグルテンの力を持ったものが売られています。従って、美味しいケーキを作るのには、ケーキミックスを使うか、ケーキ用の小麦粉を探してこなければなりません。

 中国の小麦粉

 小麦は米に次いで重要な作物で,主として黄河の北で栽培されています。国民1人当たりの小麦粉消費量はアメリカに匹敵します。小麦粉の用途は75〜80%がマントウ(蒸しパン)とめん、13〜18%がケーキやクッキーを含む焼き菓子類、7〜8%がパンだと推定されます。北部の小麦生産地帯ではマントウが小麦粉消費量の70%を占めますが、南部では米やめんが主食です。北部では食事の約20〜30%、南部では約15%がめんの形で食べられています。
北部のマントウには国内産の硬質小麦の粉を,南部のマントウにはたんぱく質の量が中程度の軟質小麦の粉か、軟質小麦と硬質小麦の粉をブレンドしたものが使われます。南部では国内産小麦の他に、オーストラリアやアメリカの小麦も使われています。国内産の硬質小麦はたんぱく質の量が少ないのが多いので,高品質のパンを作りにくいようです。
地域による小麦粉の品質差が大きくなりました。臨海地帯の経済が発展しているところでは,外国から輸入する小麦を使って,灰分が欧米並みの0.5%程度の小麦粉を用途別に製造する会社も現れました。しかし,多くの地域では,一般粉,標準粉,1等粉,2等粉の4種類の小麦粉が製造されています。一般粉は最も品位が低くて,灰分は1.40%以下,グルテンは22.0%以上,標準粉も品位が低く,灰分は1.1%以下,グルテンは24.0%以上です。1等粉の灰分は0.70%以下,グルテンは26%以上です。1等粉からは比較的品質が良いマントウやめんを作ることができます。2等粉は一般粉と1等粉の中間の品位で,灰分は0.85%以下,グルテンは25%以上です。1等粉が手に入りにくいので,消費者は2等粉をよく使います。めん用として一番需要が多いのは標準粉です。

 韓国の小麦粉

 1人当たり平均の小麦粉消費量は,日本とほぼ同じです。大部分を占める業務用の小麦粉は用途によって,多用途粉,パン用粉,ケーキ用粉,配合粉,小麦全粒粉に分類されています。また,多用途粉,パン用粉,ケーキ用粉の製造では灰分の含有量によって,1〜3等粉に分けられていますが,食用になるのは1等粉と2等粉です。使う原料小麦の種類は日本の場合に似ていますが,その質や細かい配合は違います。それぞれの用途別に日本の小麦粉と比較すると,たんぱく質の含有量は同程度のものがありますが,その質は微妙に違います。また,灰分含有量は特殊なものを除いて,日本の1等粉や2等粉よりやや高めです。

 多用途粉は中力粉とも呼ばれ,めんを中心に幅広い用途に使われます。小麦粉全体の約2/3がこの粉です。オーストラリアの小麦やアメリカの軟質小麦が原料です。パン用粉は強力粉とも呼ばれ,主にパンの製造に使われます。パン用粉の生産量は小麦粉全体の約16%で,日本に比べると少なめです。アメリカの硬質小麦が主体ですが,品質が良いカナダの硬質小麦を配合することもあるようです。ケーキ用粉は薄力粉とも呼ばれ,ケーキをはじめ,いろいろな菓子類の製造に使われます。アメリカの軟質小麦が主体ですが,オーストラリアの小麦を配合することもあるようです。

 配合粉とは,小麦粉に他の穀物の粉を混ぜたもので,量はそう多くありませんがこの国の伝統的な食べ方の一つです。小麦全粒粉は全粒粉パンの原料ですが,生産量は僅かです。小麦粉全体の約7%が家庭用で,消費量が増える傾向にあります。内容は多用途粉です。


参考文献:財団法人 製粉振興会「海外の小麦粉事情」から抜粋させて頂きました。
http://www.seifun.or.jp/backnumber/home.html#zizyo
http://www.seifun.or.jp/topics/zigyou/japan.html